のろまな果報者 3(完)

<7/23の続き>

言われたとおりに高速の伸び側を1回転締め込み、メーカーの言う「スポーツ仕様」の設定でコースに入る。フープスを通過するとき、それまでのリヤタイヤを蹴り上げられるような怖さが、少しだけ和らいだ。おかげでインに寄せきれず、アウトバンクを使って直線に立ち上がり、直角の右コーナーのすぐ先、短いテーブルトップをそれまでと同じようなやり方で跳び上がると・・・自然な弧を描いて、SXが反対側の斜面に着地した。初めて自分が思う軌跡をなぞるマシンに、暑さも気にならなくなっていく。フロントフォークを沈み込ませたまま、コーナーに向かい流れるようにマシンを傾けるには、まだ時間がかかりそうだけど、nakaneさんが言うみたいに、そのうち慣れてくるような、そんな気がした。

最後のクール、気心の知れた二人との模擬レースを“トップ”でフィニッシュ。チェッカーフラッグをその気になってくぐり、ときどき右手をグリップから下ろしてブラブラとさせながら、パドックへと戻っていく。井戸水をアタマからかぶり、背中を濡らしたままパドックを横切っていたら、「パパさん、KTM見せてよ」とkenyaさんから声をかけられて、なぜだか口元がゆるんでしまった。MCの150クラスで最速を争う面々、こんな人たちに囲まれて、好きなマシンでホームコースを走れる日が、またやってきたんだ。ここにもうひとり、Show-Gが居れば・・・みんな揃うのに。ふと瞳を閉じると、旧MX408のバックストレート、土埃を巻き上げて迫り来るミニモトの集団がぼんやり浮かんできた。