金色の・・・ 6(完)

<7/22の続き>

スターティングエリアを大きく回り込むアプローチは、最後になって水たまりの中に消えて水没している。今日だけはコースの入口と出口が同じで、だからフィニッシュのテーブルトップジャンプを越えた先で、マシンが交錯する。その入口、最終の右コーナーの手前で一度マシンを止めて、左のフィニッシュテーブルを見やる。と、コース側、左に少し傾く地面に下ろした左足が一瞬空を切り、そこからSXが大きく倒れ込んだ。すぐに地面に届いた左足がマシンを支えて・・・何とか立ちゴケを免れる。シートの高さと足の短さを、こんなところでも思い知らされる。気を取り直して、もう一度左からマシンが来ないことを確認しながら、ゆっくりとコースに入る。水を吸い込んだ山砂に、フロントタイヤがめり込み、リヤタイヤの駆動力をからめ取る。いたずらにエンジンだけが高く吠えて、MX408と白く刻まれた山肌にこだまする。

ishibashiさんのCRF150R-Ⅱを先導して何周か回るうちに、どこからか2台はバラけてしまった。ひさしぶりのモトクロス、初めてのコース、いきなり全開で走るような真似はしない。そんなところが、少しだけiguchi師匠に似ている。独りになって、遊びのないシフトペダルにも慣れてきて、開けきれなかった谷田部のコースでは味わえなかった、からみつく重たい山砂に負けないチカラを、ホームストレートから第1コーナーを折り返して408コーナーまで、思う存分に楽しんでみる。どこかに居るはずのiguchi師匠のCRFを探しながら、上手くない姿勢でテーブルトップをいなしては、周回を重ねていると、iguchi車ともishibashi車ともまた違うCRFが目の前に割り込んできた。けして大きくない背中を屈めるようにしてコーナーを曲がると、きれいに直線を立ち上がる。その後ろ姿は、走りの良さとは別に、どこかいつもと違って見えた。

短いフープス、ネックブレースとヘルメットのわずかな隙間で、くるりと丸まった金色が踊っている。いつもなら少しずつ近づいてくるはずのリヤタイヤが、今日はやけに砂を巻き上げては、先へ先へと逃げていく。コーナーに迫る一瞬だけ大きく映る背中に、金色の毛先が揺れて、夏のヒカリをまばゆく跳ね返す。いかにも彼女らしい、その後ろ姿に見惚れていたら・・・ブレーキレバーを引くのが遅れて、低いバンクに乗り上げそうになった。