彼岸 3

週末から次の週末まで、丸々9日間。長いその夏休みの冒頭に、里帰りしてきたryoが乗ったときのまま、エンジンが吹けあがらないCRF150R-Ⅱは、ついにここまで手を入れられなかった。ぶっつけ本番で軽井沢まで持って行ったのが、一週間前。その日も、結局bongoに積まれたままで帰ってきて、あれからひと月が過ぎてようやく、その4スト150ccにまともに火が入った。

踏み下ろすキックペダルは、ブーツの底を軽く押し上げるように抵抗して、エンジンが正しく圧縮していることを知らせてくれる。6回目、疲れてイヤになるずっと前に、乾いた4ストロークの音がパドックに弾けて転がっていく。重たくくぐもったいつもの音ではなくて、とてつもなく軽く、それなのにひどく耳障りな破裂音。右手を戻してもすぐに落ちてこない回転が、混合気の異常さを伝えているようだった。

<つづく>