彼岸 4

キャブセッティングで言えば「開け始めから開度1/2まで」、つまり一番使うところがまったくダメ。回転の上がりが鈍ければ、もちろんチカラが出るわけもない。せっかく乾いた砂が、散水のし過ぎで少し重たくなっていたけど、4スト150ccのCRFには問題ないはずだった。むしろ、まだ十分角の残ったIRCのタイヤが食いついてくれて、「結構無茶ができる」と、そう思っていた。ただそれは、全開にしたスロットルにエンジンが付いてきたときだけ。とにかく回転が落ちてこないようにと、左の人差し指と中指はクラッチレバーにかかったまま、ばらつく排気音もさっきのままで、コーナーを回る速さと音の勢いが、まるで合っていない。何とか20分の走行時間を走りきって、下品な音をまき散らしてパドックへと帰っていく。軽トラの後ろにまわって、三角スタンドでマシンを支えていると、先に戻っていたkusabaさんが不思議な目をしてこっちを見ていた。

<つづく>