彼岸 10

フルサイズ組と一緒の今日は、今の自分とSXにできる精一杯の走りをして、コースの中に居場所を確保する。気分次第で走れないのは、今日のメンツと走っていた昔のMX408と同じ雰囲気。わずか10分を、途方もなく長い時間に感じながら、待ちに待ったチェッカーをくぐり抜け、パドックへふらふらと戻る。ヘルメットを脱いだところに、隣に#938のサイドゼッケンが帰ってきた。後にざりままのCRFが続いている。

目の前に傾げたCRFとは、音の質がまるっきり違う。泥落とし用の木槌を手にして、まずは自分たちのサイレンサーを叩いてみた。カンカンと高い音で、まるでただのアルミの管を叩いているようだ。そこから今度はざりまま車。コツコツと締まってこもった音は、中身のぎっしり詰まったスイカを思わせる。「もしかしたら・・・」。このとき初めて、サイレンサーのグラスウールを交換した自分の姿を思い出した・・・。

<つづく>