泥とワダチと新しい出会い 2

<10/18の続き>

この週末、秋の太陽が顔を出して気温も上がるはずだったのに、土曜日の明け方まで降り続いた雨のおかげで、コースのあちこちには水たまりができている。先週のイバモトと違うのはひとつ、雨が落ちていないことだけ。雨水を吸い込んだ山砂が、粘るようにしてsaitoさんの操るブルドーザーのバケットにからみついて、中に足を踏み入れるのはモトクロスブーツを履いてもためらわれるほど。レースの時と変わらぬ光景に、デジャブを味わう。まだ艶のある外装に粗い紙やすりを当てるような真似は、しのびない。積んできた2ストロークの85SXに、後悔に似た気持ちを抱きながら、フィニッシュテーブルを後にする。曇り空の下、散らばる常連の顔も今一つさえないパドックの遠く水場の方から、細くカン高い排気音が伸びてきた。KX85-Ⅱを駆るのは、蛍光イエローの差しが入ったTHORのウェア。彼女だ。

<つづく>