サイゼリアのキミに 3(完)

<10/27の続き>

スカートの裾がはだけるのなんかかまうことなく、大きく脚を開いたまま、正面に座る同級生と話し込む横顔は浅黒く、その上に真っ黒な瞳が大きく、それでいて長く切れるようにして、目尻へと流れている。この姿にそっくりな娘と、過去のワタシは一緒に過ごしていた。ちょうど彼女たちと同じで、詰め襟の黒い学生服を毎日着ていた頃のワタシは、今よりもっと傷の付きやすい、安売りの桃のような気弱さだった。そんな冴えないワタシに、彼女はいつも普段のように話しかけてくれて、だから互いに互いの異性を意識することもなく、よく一緒に笑っていた。その色黒で、どこか南の島の香りのする肌を、異性に面と向かう勇気のない子どもの俺たちは、言われのないあだ名を付けてはからかっていた。年頃の異性を思うにはずいぶんひどいことをいっていたけれど、それがいい照れ隠しになって、彼女とはヘンに構えることなく、何でも素直に言い合えていた。今、手を伸ばせば届きそうなこの距離に、セーラー服を着たあの頃の彼女が漂う。ふわっとやわらかな気持ちを、今度はボローニア風のミートソースパスタに絡めながら一口、ほおばってみる。黒くて大きな瞳が一瞬、こちらを見て、微笑んだ気がした。