泥とワダチと新しい出会い 3

<10/21の続き>

ホームコースだとしても、その日の一周目、朝一番でコースに入るときは、たいてい様子を見ながら流すもの。今さら誰も言いはしないけど、そう決まっている。

今日のように土や砂が水をはらんで、タチの悪い泥になっているのなら、それはなおさらだ。自分を甘やかす訳じゃないけど、そんなマディなコースに、線の細い2スト85ccは不向きだったりする。リヤタイヤに重くまとわりつく粘土を蹴散らそうにも、チカラのないエンジンはただ回転数を上げるばかりで、マシンは少しも前に走らない。それでも直線があれば、次のコーナーが迫る頃には速度が乗ってくるから、ブレーキを使わないわけにはいかない。たとえ前も後ろのタイヤも食いつかず、簡単にすべってしまうような泥の上でも・・・だ。

クランクケースカバーのガスケットが間に合っていれば、何としてでもクラッチを組み上げて、4ストエンジンのCRF150R-Ⅱを持ってくるべきだった。後ろ向きな気持ちが、85SXを軽トラから下ろすのを躊躇わせて、いつまでもコースサイドにカラダを置き去りにする。そんな淀みかけた視界の片隅、緑色した2ストマシンが叫ぶようにコーナーから立ち上がってきた。そしてその先、泥にフロントタイヤが取られたマシンが、思いきり泥の中にライダーを沈める。あざやかな蛍光イエローの左側半分が、まったく褐色の泥に塗りたくられてしまった。

<つづく>