正しいウソのつき方 5

<2/6の続き>

川砂の上にドカッと座り込んだ足元、後輩たちが笑いながら、AXOのブーツを引っ張り出す。自分じゃ痛くてどうにもならない。後輩に託した右足を、ただ眺めているだけ。ふいに足首をねじるような動きに痛みが走り、たまらず「うぐっ」と短く声を上げると、驚いた4つの手が抱えていた右足をあっさり砂に落としてしまった。かかとから落ちた衝撃に脳天まで痺れて、右足は激しく痛み出し、思わず背中がのけぞり天を仰ぐ。10分以上格闘してようやくブーツが剥がれ、軽くなった右足に川風がそっと触れていった。もうバイクには跨がれそうにない。そのまま後ろ手をつき両足を投げ出して、日が暮れ始めるまで砂の上、むせるような土と草の匂いを嗅ぎながら、仲間たちの走りを、ただ眺めていた・・・。

<つづく>