正しいウソのつき方 9(完)

「不安だけどな」。短い言葉に、揺れるココロがにじむ。

カラダの不安と同じぐらいに、仕事の後先に不安が過ぎるのだろう。正直だけではすまない世界に薄々感づいても良さそうなのに・・・光化学スモッグにむせぶことも、合成着色料にベロを真っ赤に染めることも、破傷風におびえながらヒザを擦りむくことも、カタヤのオヤジにドロンされることもわからない、純粋培養されたゆとりの国の住人は、そんなことも知らずに素直に育ってしまったから、うまくウソを呑み込めないでいる。

それでも社会に出て一年が過ぎようとして、隠しておかなければいけないこともあると、わかり始めたようだ。いつになったら、正しくウソをつけるようになるのか。それとも、このまま過ぎてしまうのか・・・ヤキモキしていたけれど、真実よりもウソの方が重宝されるときがあって、真実を告げられるよりもウソを聞かされた方が楽なときがあることには気づいたようだ。モトクロスで癖になっていたなんてことは・・・言っちゃいけない。