蒲田の朝

まばらなスーツ姿が、まだ湿り気の残る通りに、靴音を響かせる。駅前に向かって斜めに延びる直線には、少しやれた色のタイルが2色、互い違いに並べられている。ところどころに吐き捨てられたチューイングガムが黒く染みをつけていて、またぐ通りにも土は見えない。見上げれば、林立する雑居ビルにいびつな直線で切り取られた空が、青く光っていた。

駅ビルの白い建物が、朝のヒカリを背に浴びて暗くたたずみ、放射線状に集まってきた通勤客を一口に呑み込んでいく。コンコースを抜けて、駅の反対側へ下りていくと、聞き覚えのある映画音楽がホームから流れてきた。ボディーに青い線を付けた車両が、静かにドアを閉めているところだった。