跳んだ 4(完)

<4/6の続き>

一瞬で縮んだフロントフォークが、フロントタイヤを軽く押し上げ、すぐにリヤタイヤがリップを蹴りつけた。遅れないようにカラダを大きく上に伸ばすと、飛び上がるでもなく橙色の車体が、まっすぐオーバーハングに浮かんでいった。空中で水平を保ったままのSX。それでもハンドルバーを引き、フロントタイヤをカチ上げて、最悪のシナリオを真っ先に消去する。着地すべきやわらなかコブは、タンクとシュラウドで見えなくなっていた。

ほんの1秒足らず。時間にしたら、そんなものかもしれない。重力が2ストローク85マシンの軽い車体を引き寄せ始める。ホワイトパワーのサスペンションと頑強なスイングアームがコブを捉えるとすぐに、極太のフォークに支えられたフロントタイヤが、やわらかに着地する。そのまま暴れ出すこともなく、コブをなめるように走り抜けるSX。一周目にできなかったガッツポーズでテーブルトップを越えると、ざりままのCRFが最後の坂を上りかけていた。

跳んでしまえば、何てことはない。それは、いつもそう。ただ、勇気が足りていないだけ・・・。