サン・ジョルディの日

二十四年前に商売替えをしてから、よく文庫本を手にするようになった。好きな作家がいるわけでもないから、決まって夏、出版社がこぞって目録を配り始める頃、気に入った話の本を選んでは買い増しをしてきてきた。ただ、どれも残り香は少なくて、そのたびにまた一冊と本が増えていく。

思えば本なんて、贈ってもらったことなどひとつもない。文学少女と付き合っていたら、もしかしたら、そんな日がやってきたのかもしれない。サン・ジョルディの今日、男はバラを送り、女は本を贈るという。一度でいいから、生身の女性が薦める本を手にしてみたかった。