帰り道

薄暮アスファルトに、つかの間ヘッドライトとテールランプが行き交う。記憶を失いかけることもない帰り道、淡く紅に染まる西の空に向かい、ボンゴのハンドルを握る両手にはまだ、チカラが残っていた。極上の路面に軌跡を刻むSX、誰よりも先にフィニッシュラインをまたぐ夢は、夜半の雨に濡れて消えてしまった。

そのきれいなままのSXの横、左に傾げるCRF150RⅡだけが、ひどく疲れているように見える。持ち主のryoと違って、どこでも半クラッチでごまかし走るワタシはまた、クラッチを焼き付けてしまったらしい。まったく遊びの無くなったクラッチレバーに、泥に汚れたゴーグルが揺れている。