少しは借りを返せたかな 5

<2/20の続き>

エンジンの回転を落としたくなければ、遠回りをすればいい。簡単だ。とりわけ2ストロークという急いた性格のエンジンならば、なおさら。だからワタシのSXはいつも、ホームストレートを左の端に寄ってから、バンクの縁いっぱいまで迷わず大きな弧を描く。でも、nagashimaさんは、そんな楽はしない。いつでもカラダを折り畳むように丸めながら、カーブの内側をえぐるようにして誰よりも小さく回ろうとする。そして、鋭く直線に立ち上がり、コースの上に、もっとも短い軌跡を青く引いていく。だらりとヒジを下げて周回を重ねることは、けしてしない。

先に第1コーナーを抜けたのは・・・YZ。続く408コーナーへの直線、馬力に勝るSXが、その距離を一気に詰めて、ゆるんだブレーキングギャップの手前で真横に並びかける。右から寄せるSXが見えているはずなのに、気にかける素振りも見せず、車体半分を前に出すと素早くマシンを左に押し倒して、深い傾斜を保ったまま、大きな左カーブに真新しいワダチを刻んでいく。まったくこの切れ味・・・刻まれたワダチの端に乗り上げて、SXが大きくバウンドする。ゴーグルの真ん中から、小さな背中がするりと逃げていった。

<つづく>