少しは借りを返せたかな 6(完)

コーナーを抜けるたびに広がる車間を、短い直線だけで必死に詰めて走る。コースにやわらかな一筆を描くYZ、その軌跡を橙色の車体がでたらめに切り刻んでいくーーいつもの接近戦、ただひとつ違うのは、SXのリヤタイヤが、ずいぶんと山砂を噛んでくれること。そして、前後に配された贅沢なサスペンションは、フープスに跳ねるシャーシを見事に抑え込んで、マシンを前へと運んでくれている。ここで再び、nagashimaさんの背中を大きく映しながら、小さく回る青の外側にSXを走らせる。

ほぼ同時に立ち上がる2台。それでもなだらかな円弧が、SXの加速を滑らかにして、続く直角の右カーブへ先に届いたのは・・・少し褪せた橙色のフロントフェンダーだった。そこから短いテーブルトップを2つ跳び越えて、深い茂みのなかへと坂を駆け上がるSX。頂点を折り返す、鋭い左カーブを少しだけゆっくりと回り、つかんだばかりの勇気を持って、オーバーハングを急いで飛び出した。きっとその隻眼には、伸びやかな背中が映っている。着地してスロットルを開けるヘルメット越し、乾いた排気音が少しだけ遠くに聞こえていた。