6丁落とし 3

<5/15の続き>

kyo-chanに言われたことを素直に聞いて、逆さまに取り付けてしまったクラッチプレートを組み直し、前後のスプロケットとチェーンも、1年前に仕入れておいた新品に交換して、ステムベアリングにはたっぷりと防水グリスを塗りたくって・・・マシンは有り余るトルクを路面にぶつけて、ご機嫌に走るはずだった。それなのに、加速と減速がどうもうまくない。

第1コーナーの進入で平気で1速までギヤが落ちるマシンは、2速で過敏に立ち上がるかと思えば、半拍遅れて直線の真ん中辺りで、ようやく右手に同期する。そこからカーブを2つ、左と右に車体を翻して坂にかかれば、今度は途端に回転が落ち込み、くぐもった排気音が山肌をなぞるようにして、マシンが息をつく。調子に乗れないのは、慣れない4ストロークのせいなのか。

我慢していた左の人差し指が思わずレバーに伸びて、エンジンが激しく吹け上がった。

<つづく>