ああ、忙しい・・・ 4(完)

<5/30の続き>

ゆるんだ山砂と、どこまでもフラットなCRF150RⅡに、少し慣れすぎた。

渇いたコーナーが、弾くようにSXのリヤタイヤをすべらせる。CRFなら3速に入れたまま、たぐり寄せるように回ってくれるはずが、細いトルクを突き抜けるように吐き出す2ストロークエンジンでは、そうはうまく走れない。固くて跳ね返りの強い路面に、カーブというカーブで手を焼かされる。ヘルメットの中で笑っていられるのも、右手任せに長い直線を駆けているときだけだ。

おまけに、すぐれもののフロントブレーキが、人差し指だけでフロントタイヤの動きを殺し、反力の強いスプリングは、何の相談もなしにラインを外に弾いてくれる。だからといって、手前から大きくスロットルを戻し、軽くレバーを引こうものなら、とたんに車体は均衡を失い、バンクの向こう側へと逃げようとする。そして、半端に落ち込んだ回転で、エンジンはまた、右手の言うことを聞かなくなる。

軽さをいいことに、直角に曲がった先のテーブルトップジャンプを、高く遠くへ跳び上がる。そして、重力の途切れる瞬間、それまでの忙しさをそのときだけ忘れる。褐色の路面に接地したタイヤが、砂塵を軽く巻き上げた。