6丁落とし 5(完)

<6/1の続き>

知らぬが仏というやつだ。わかってしまうと、さっきまでの不具合が気になって仕方がない。さらにもうひとつギヤを落とさなきゃいけない進入にも、とことん鈍い脱出にも納得して、3時ちょうど。最後の20分に走り出す。

パドックを後にしたのは、もうひとつのCRF150RⅡ。#148を着けたtakadaくんのマシンに、同じ4ストロークが共鳴する。iguchi師匠を思い出しながら彼と二人、連れ立つようにして陽の陰ったピットロードを行く。そして、スターティンググリッドの前でリヤブレーキを引きずり、ゆっくり後ろを振り返ると、Go-Proを乗せたヘルメットがわずかにうなずき、ワタシのCRF150RⅡが“ウサギ”になった。

ダートトラック上がりの彼のマシンは、きれいなアウトインアウトを描く。その咆哮を抑えこむように、好きな408コーナーをインベタで抜ける。排気音が間近に弾けるその距離感に思わず、直線番長であることがアタマから消えてなくなった。足りない瞬発力を遅めのブレーキングと半クラッチで埋めてやれば、背中にぶつかる音が少し遠くなる。最後のランデヴーは、こうして始まった。