あと5cm。 4

<6/8の続き>

過敏なリヤブレーキに遠慮して、迫る直角の右コーナーを、右の人差し指だけで引き寄せる。

またもSXのつもりで軽めに引いたレバーに、パッドがディスクローターをこする感触は伝わらず、路面にフロントタイヤが突き刺さる感覚もなく、慌ててバンクの手前まできてからリヤタイヤをロックさせた。それでも程よい慣性と、排気デバイスの効いた2ストローク125ccエンジンが、わずかな右手の動きにも遅れず、続く短いテーブルトップを2つ、大きく跳び越えていく。

乾いた路面に着地するアルミフレームに、もちろん不安はない。そこから気負わず最後の斜面を上って下って、バックストレートのウェーブをその起伏のまま上下になぞっていく。そして、左に傾けたマシンのステップに立ち上がったまま、両ヒザを曲げることなく、ギャラリーテーブルを跳び上がる。

<つづく>