枇杷の香る季節

通りの両脇を棕櫚が並んで走る。なだらかな坂をまっすぐに上っていって、助手席の窓から東京湾に浮かぶ陽を眺めながら、Bongoのハンドルに両手を添える。ちょうど一年前、そう言っても一週間ほど早く訪れたときは、梅雨のど真ん中にあって、地面もずっと湿ったままで空気が蒸してた。それが今年は空梅雨の中の、ぎらつく真夏日。海風すら乾ききって、細かな砂が路肩に波紋までつくっていた。

嵐の歌声が静かに流れ、隣に座るkeiが寝息を立てる。荷室に乗ったシロとネロも、大人しく寝ころんだまま。年に一度、枇杷の採れるこの時期だけにやってくる南房総。晴れ渡った日の終わりを背に、KAWASAKIの250ccが走り去っていった。