Last chance 3

<6/20の続き>

遊んでるわけじゃない、必死に前を追いかけている。でも、ただ追いかけているだけ。前に出る自分の姿は、思い描いてはいなかった。いや、それどころか、抜き去る自分さえもイメージできていなかった。もっと気持ちを入れて、散らばる3つの背中の、その前。ちらっと見えるかすかな世界を、見据えていなくては・・・たぐり寄せることなどできやしない。

408コーナーの入口で、両手を大きく左右に広げて「深呼吸、深呼吸」と叫ぶiguchi師匠に背中をポンと叩かれて、しびれた右の手のひらにチカラを込める。matsunagaさんの背中を捉えるのは、この周回しか残されていない。どうしても前に出たい、それなのに届かない背中へのもどかしさ。悔し紛れに大きく空吹かすると、matsunagaさんのヘルメットがわずかに揺れたように見えた。

<つづく>