背高のキオク

燃費も安全性も、さほど気にされることなく、馬力や運動性能を競い合い、それがもっとも美しいとされていた80年代。確かに若いココロは、レシプロエンジンの限界に熱くトキメいていた。

その名を「シティターボⅡ」、ブルドッグの愛称が耳に懐かしいマシンには、「アクセルを全開にすると10秒間、ターボの過給圧を10%上乗せ」する、そんなやんちゃな隠し味が仕込まれていたという。過激も過激、ただその響きに酔えた時代は、メーカーにもユーザーにも何かがあふれていて、その何かに乗ってマシンはどこまでも突き抜け尖っていった。

ストローク500ccなんていう、今では夢のようなマシンが、平気な顔で通りを流していたあの頃。2000万円も出して買うほどの緻密さには遠く及ばなくとも、補って余りある、荒削りゆえの魅力が4つのシリンダーには詰まっていた。誰もが上を向いて、何でも笑えた時代。ずいぶんでたらめな時代に、それでも楽しい思い出だけがよみがえる。

レンタカーの「トールボーイ」に若造4人が乗り込み、筑波のパープルラインを駆け上がる。いくつめかのカーブをついに曲がりきれず、マシンは縁石を越えて、バンクよろしく山肌に勢いよく乗り上げて、ようやく止まった。運転手を除いた3人全員が、両腕を突っ張って、両目を見開いている。一瞬の間があって、皆が声を上げて笑った。あの日の4人は、まだ今を生きている。パソコンの画面を眺めては、彼らに会いたくなった。