夕暮れの下り列車

上野駅のプラットホームを離れるとすぐに、列車は日暮里駅に到着する。吊革につかまる列が3本になってなお、開いた扉から人が詰め込まれる。しっとりと湿り気のある背中が後ろに当たって、少し不愉快な下り列車は、大きく右にカーブを切って踏切を越え、三河島の駅に向かい坂を上り始める。

南千住の駅にすべり込む前、一瞬だけ大きく、スカイツリーのてっぺんが覗いて、第三セクターへと流れる人が、少しだけホームに降り立つ。窓の外で、隅田川に夕日が長いヒカリを垂らしている。北千住に着いて迷ったあげくに、そのまま柏まで乗っていくことにした。加速した列車が荒川の橋梁に差し掛かり、さっきと同じ夕日が、もっと長く、杏を水面に溶かし揺らしている。

霞む西の空に呑み込まれるまでに、この列車はあと2本、川を越える。効き過ぎた冷房の風をまき散らしながら。