人呼んで・・・

 俺が居たんじゃ お嫁にゃ行けぬ

 わかっちゃいるんだ 妹よ

江戸川沿いの道を松戸から南へと下り、途中、三角帽子の取水塔が見えるとすぐ、帝釈天への道が分かれる。ここを通り過ぎるたび、ふと口ずさむのは、決まってこの一節だ。

 帝釈天で産湯を使い 姓は車 名は寅次郎

 人呼んで フーテンの寅 と発します

下町で育ったワタシは、小さい頃、よく帝釈天にも遊びに連れてこられた。でも、その頃は、参道を練り歩くよりも先に、駄菓子を買ってもらってそのまま江戸川の土手に駆け上がる方が好きだった。

「やせ細った死に顔を他人には見せたくない」と。「骨にしてから世間に知らせてほしい」と言い遺して、まるで寅さんを地でいく渥美清さんの、今日は命日。潔い生き様の大先輩と同じ日に生まれたことを、誇りに思う。