もうすぐ

「新車じゃないの」

ガレージを覗くkeiが思わず声を上げた。

買ってきたばかりのRM85Lが、フレームにエンジンを載せただけの姿をセンタースタンドの上にさらして、ガレージの床には取り外されたプラスチックパーツやらスイングアーム、フロントフォークやタンクが無造作に並べられている。そして、足の踏み場さえ気を使うほどに、工具が散らばっている。

「これで、いいんだよ。ほっとけ」

グリスまみれの手のひらを避け、右の腕の背で、額を流れる汗を拭いながら、ぼそっとつぶやく。こすれた痕もなく、まっさらなボルトの腹にグリスをまぶして元のところへ組み付けていく。そうして外れた部品がひとつひとつ戻っていき、RMをRMに仕立てていく。

もうすぐ、走れるようになる。気になるのは・・・週末の天気だけだ。