Debut 3

<9/11の続き>

実家のある松戸に寄り、法事に呼ばれた母をBONGOに乗せてから走り出す。そして、今では名前の消えてしまった生まれ故郷の水海道まで連れていってから、ようやく谷田部へとハンドルを切り直す。大ざっぱに言ってしまえば隣町、ここからなら30分ほどで届く距離だ。雨は松戸に着く前には止んで、国道6号線を北上する途中、どんよりしていた空はヒカリをたたえ始めていた。少しずつ雲が切れて、バックミラーにのぞく青空に、後ろの相棒がうれしそうに映る。もう何度も乗せては降ろすだけを繰り返して、エンジンにはまだ火が入っていない。小貝川の北詰を左に折れると、目指す森の中にあと半分。空の高いところには、いつしか夏の太陽が浮かんでいた。

<つづく>