Debut 5

<9/19の続き>

受付にtodaさんの姿もなく、パドックに見知った顔もない。まばゆい木漏れ日の中、ひさしぶりに味わう「アウェイ」は、かえって都合がいい。バックドアを跳ね上げ、真新しいハンドルバーにかかったタイダウンをゆるめて、指先でブレーキレバーを引きずりながら、黄色い車体を乾いた路面に落とす。

時折空に雲が流れては、強い陽射しをさえぎり、瞬間肌が冷める。急くように着替えをすませ、灰色のシートにまたがり、SIDIの底で梨地のキックペダルを踏みつける。あのころと変わらない、短いストロークで5回ほど往復したペダルに、ようやくケースリードの2ストロークが反応する。

アルミを巻いた寸詰まりのサイレンサーが、ここぞとばかりに真白い煙を吐き出した。くぐもった、あのなつかしい音とともに。

<つづく>