プラス15の優越

たっぷりと雨水を吸いこんだ山砂が、褐色にコースを覆いつくしている。

大きく垂れた左右のレバーとストロークの深いブレーキペダル。おまけにノーマルのまま狭く低いハンドルでは、思いきり加速して走れない。そして、空気圧を落としたフロントタイヤには泥がまとわりつき、まっすぐ走るのを拒むように左右に首を振る。どこまでも好みと真逆のセット。プラス15ccのエンジンを楽しむ余裕なんて、どこにもなかった。コースサイドの声にもヘルメットを傾げて見せるだけ、視線はフロントタイヤのすぐ先に落ちたまま、ピットロードに戻るまで動かない。

それでも・・・坂の途中で止まってしまっても、リヤタイヤを振り回すことなく素直に上り始めるKX100。この穏やかなトルクが、+15の優越なのだろうか。割り当てられた45分の間、ワタシを幾度も助けてくれたマシン。いつかこのマシンを、ベスコンの上で楽しんでみたい。