ツインだけの三重奏 後編

エリック・ビューエルが仕立てたV-Twinは、よく回った。

アイドリングで佇むとき、車体ごと崩壊してしまうのではないかと心配するほどの振動は、走り出すとすぐに消えてなくなり、おおらかなはずのOHVは、レーシングスペックを余すことなく披露する。華奢で、取って付けたようなフレームに薄っぺらなシート。ほとんどエンジンに乗っかっているような姿勢のまま、次のコーナーへとフッ飛んでいく。2ストロークのように吹け上がるエンジンで持っていく、muraのLaverdaとはまるで違う、自分の脚でアスファルトを蹴って瞬間移動する感覚が楽しかった。Monsterに戻ってきても、強烈な躍動感はカラダの芯に残ったまま、トルクがなくなってしまったような錯覚に陥る。それほどに烈しいエンジンは、あれからずっと味わったことがない。極端に短いホイールベースと、その重さを受け止めるには非力なリムオンのシングルディスクにとまどい、オーバーランしそうになっても、だ。

こうしてハーレーの話に触れるたび、あのとき感じた躍動とともに急峻な峠道が恋しくなる。もう三人並んで走ることはないのだけれど・・・背中にmuraを感じながら、hideさんのBuellを追いかけてみたくなる。