Not enough

西の空高く、たなびく雲に陽が透けている。利根川に架かる目吹の橋を越えたのは5時間くらい前のこと。これほど早く渡ることになるとは思いもしなかった。そんな感傷を遮るように、運転席に沈めた腰椎が橋のつなぎ目を拾って激しくしびれ、一瞬、眉毛が吊り上がる。痛みと引き換えに消化不良だけを抱え、裏返してたどるアスファルト。タンクにたっぷりとガソリンを残した愛機が、荒れた通りを抜けるたび音を揺らす。BONGOのフロントガラスに、まだ早過ぎる午後が明るく映っていた。