エンスト、水浴び、前回り 4

クリッピングポイントまで、前下がりに走るRM85L。右手はスロットルグリップを閉じたまま、右足はブレーキペダルに触ったままだ。そして、うまく1速に落ちなかったエンジンは、細い2ストロークの鼓動を止めてしまうと同時に、フロントタイヤをワダチの縁にこすりつけ、右に大きく、面白いぐらいに一気に傾げた。くぼみの上っ面を滑るSIDIの底。宙をさまよった右脚は、ついにマシンの勢いを押しとどめることはできなかった。

<つづく>