曲がるんじゃない 3

同じ2ストローク85ccエンジンなのに、どうしてこれほど違うのだろうか・・・踏みとどまろうとするココロを粉々に砕いて、乾いた排気音が、褐色の埃に見えなくなっていく。

インフィールドのストレート分は離れていたはずなのに、その差をストレートエンド、左から右へと切り返しているうちに、一気に詰められた。真後ろから耳障りな高周波が、ぶつかるように響きわたる。ずいぶん手前から右手を戻しては、すべる路面を探るようにたどるクランク。たしかに乗りは悪い、それでも瞬時に背後に着かれるとは、ゼッケンの青色は伊達じゃない。

ひとつ低いところに現れる左のタイトターンを翻るまでだった。続く大きなバンクを持つ右コーナーで気圧され、RMごとアウトバンクに弾かれた。インベタで回っていくCR85改は、すぐに全開に吹け切り、あっという間に立ち上がっていく。その繊細で豪快なコーナーさばきに、着いていく気も失せてしまう。そして、全開で跳び上がるバックストレートの先に・・・その姿はもう無かった。

＜つづく＞