夜を渡る月

夜を追いやる太陽も、闇は照らさない。

雲の這った夜を晴らすように空に月が光る。滲んだ月光は、漆黒の波間に砕けながら、まっすぐこちらに向かい渡ってくる。そして揺らめきながら、いつまでも航路に寄り添い、闇を照らし続ける。

振り返ると、独り佇む甲板に、月が長い軌跡を引いていた。