覚醒

深く沈殿した気分を覚醒するのは、春の浮かれた陽気だけじゃない。

ほとんど一年ぶりにプラットフォームに佇む。耳に入線のアナウンスが懐かしい。けだるい午後のターミナルステーションでは、マスク姿の人影が、ひどくゆっくりと動いていく。どこか見覚えのある光景に、気分も上向きになる。予定にはまだ一時間。ふらりと階下に降りて、通勤の合間に立ち寄っていたブックストアに、足を踏み入れる。

地元の駅前から消えてなくなってから、こうして本の並んだ空間に分け入るのはひさしぶりだ。色とりどりのグラビア誌にファッション雑誌。週刊誌は平積みされて、これもまた見覚えがある画だ。気になる一つ二つをさらってから奥の書棚に進み、アニメ誌に囲まれ縮こまっているモーター関連のコーナーへと近づいていく。

数は少なくなって、世代交代があっても、心揺さぶる内容で楽しませてくれる二輪誌。時間いっぱいまで愉しませてもらって、そのうちの一つを手にレジへ。人気モデルのインプレッションと、ニューモデルの紹介記事が気になった一冊。巻末のショートトリップのコンテンツにまずます気分は昂ぶり・・・・・・羽織っていたコートを引き剥がした。