名栗

真夏日寸前の金曜日は、空を覆った雲が風を包み込んでいるようで、少し蒸した感じがする。田園の広がる、まっ平らな東の端から西へ・・・・・・県をまたぐように一気に走れば、アスファルトに小高い山の緑が迫り来る。旧知の友と言ったら言い過ぎかもしれない。それでも気のおけない、keiと同級生でmuraの永遠のライバルが待つ山間のcafeへと急ぐ昼下がり。走り屋の好む峠が近いせいか、平日のこんな時間にも、対向車線には色とりどりに二輪車が通り過ぎていく。

モトクロスの話を口火に、Harley-Davidson、883、Royal Enfield、Ducati、F1 PANTA、Kawasaki、ZX-25、Honda、Buel、Tesi 1D、H2、FI、電子制御、ネモケン、片岡義男・・・・・・同じ世界の住人ならではの言葉の応酬に、ゆっくりと気持ちがほどけ、時間は過ぎていき、あきれた太陽が西へと傾げていく。再会を約束して名栗の里を背に、来た道をリバース・・・・・・次は、きっと夜の帳の中で一献傾けながら、思う存分語り合いたいと風につぶやく。

鬱屈した気分が、全開の車窓から、すうっと流れていく気がした。