Schwantzの胸にも「ヨシムラ」の文字があったっけ

利根川の土手を左に見ながら、細く一筋に延びる農道を走る。「農道」と言っても普通車両に占領された「通勤街道」、10km超をほぼ直線のアスファルトがつないでいる。信号も途中に一つだけ、車線はなく、朝夕は激走区間だ。今日はその農道を右から左に風が吹き抜けていく。それも、かなり強く。

車線がない分、道幅は狭い。そんな車2台分ほどの農道を飛び越えようと、カラスが力いっぱい羽ばたいているのが見える。ちょうど「チカラ」が釣り合っているのか、翼だけが上下に大きく動いているだけで、少しも前に進んでいない。こういう日はカラスも大変だ。でも、さすがカラス。地面とすれすれの低空飛行に切り替え、車とぶつかりそうになりながらも、ようやく反対側の田んぼにたどりついた。その脇を通り過ぎるワタシ・・・ふと気がつけばハンドルを握る両手が「10時10分」の位置に収まり、両肘が少し上がってきている。微妙な戦闘態勢?ここで“落ちる”わけにはいかない。それこそカラスに笑われる。

戦闘態勢のまま、いつになくハンドルを小刻みに動かして無事駐車場に到着。と、後輩から携帯にメールが・・・愛機ニンジャがこの風の餌食になったようだ。「今朝は忍者が屍になってました(苦笑」。月の中頃には桃の花見に出かけようと言っていたのに・・・「被害が“小規模”に収まっていることを祈ってる」とだけ書いて返信。がんばれよ、u-chan!

昔、自分にも同じようなことがあった。こちらは風ではなく雨、確か梅雨の時分だったと思う。降りしきる雨で庭先の土が緩んだのか、玄関脇の柱にもたれかかるGSX-X。サイドスタンドが地面に深くめり込んでいる。完全に倒れるまではいかなかったが、ガソリンタンクは柱の形に凹んで・・・「何で・・・」と気が抜けてしまったっけ。その傷を癒すために選んだのは、新しいガソリンタンクではなくヨシムラのマフラーだった。何かに引っかかったような回り方をする水油空冷エンジンにヨシムラの組み合わせ・・・今のマシンにはない“粗い”感じに、ふと心が引き戻される。デュプレックスサイクロンが奏でる、乾いてひび割れた音を、もう一度聞いてみたくなった。