音楽だけが聞きたい音なわけじゃない

午前6時前、階段を登ってくるスリッパの音が耳に響く。起こされる前に気づいてしまうのが、何とも歯がゆい。「年を追うごとに睡眠は浅くなる」テレビ番組でそう聞いてから、さらに眠りが浅くなった気がする。聞きたくない音の代表格、木の板を叩くような乾いた音が、段々と近づいてくる。できれば布団を揺すられるまで感じたくない「音」の「気配」だ。

休みの日以外、目覚ましをかけることがない。スリッパ音の主、keiが目覚ましだ。それでも寝坊されたのは1年に1回あるかないか、とてもエライことだと思う。休みに目覚ましをかけると言っても、昔からの卓上時計ではなく、携帯のアラームを合わせるたけだ。このアラーム、なるべく刺激の少ない音を選んではいるものの…どちらかと言えば、やはり聞きたくない方の音である。すっきり爽快に目覚められるのは…それこそ1年に数えるほどしかない。

そんな携帯の着信音、これは聞きたい時の方が聞きたくない時よりは多い。好きなアーティストの歌声やシャレの利いた効果音など、わざわざダウンロードしてまで「音」に拘るぐらいだから聞きたくないわけはないか。今の携帯にしてから、あらかじめ用意されている「着信音」から好きなものを選んでいるだけではあるが…自分好みに変えているところをみると、やはりワタシも携帯への着信を心待ちにしている口なのだろう。

「How many nights sit beside the phone」鳴らない電話を、ただひたすらに待つ…Asiaの『Heat of the moment』は、固定電話じゃないと雰囲気が出ない。携帯じゃあ無理。音片は機械仕掛けで味気なくても、聞きたくてたまらない音だったのは疑いもない。中島みゆきが歌う「受話器を外したままね、話し中」も、携帯には描けないレトロな世界観だ。デジタルな世の中じゃあ「針を落とす瞬間」の感動も味わえないか。