別れの次は出会い、どちらにも桜がよく似合う

都心から遅れること一週間、辺りで満開の桜を眺められるようになったのが昨日のことだ。ようやく“北関東”にも春本番と期待したが、今日は一転して花冷え、しかも雨まで降ってしまっては桜を愛でる気分も萎えてしまう。

高校の入学式に向かうのだろうか、道行く母娘の姿が目に留まる。タータンチェックのスカートはちょうど膝丈、折り目のない真新しい紺色のブレザーに“出来立て”の形をした黒の通学かばん、足元の黒い皮靴も傷一つなく輝いている。微笑む口元が固いのは、少しばかり不安と緊張があるのだろう。肩にかかった黒髪が風に揺れて、初々しい微笑みが空に流されていく。

その娘の憂いを知ってか知らずか、連れ立って歩く母は、とてもよくしゃべる。まるで自分が高校に入学するかのようなはしゃぎようだ。洋風の娘とは反対に、薄紅の地に紫の柄を映した着物を纏う母、娘は気恥ずかしいのか、少し距離を置いて後ろから歩いていく。もうすぐ駅だ。

揃えたわけではないだろうが、最近では珍しい大きくて丸いレンズの眼鏡を、形の良い鼻筋にのせている。ゆっくりはらはらと舞い落ちる桜の花びらが、そんな母娘に「おめでとう」とささやいているようだった。