いまだ出逢えぬ高遠の桜~その1

弘前や角館など、これから“旬”を迎える桜の名所へと誘うポスターが、改札を入った正面に貼り出されている。見惚れてしまう出来栄えの写真に、気の利いた宣伝文句・・・花見の時期をやり過ごしてしまった人には何とも“刺激的”なポスターだ。そのまま階段を降りようとしたが、ポスターの中に「高遠のコヒガンザクラ」を見つけ、思わず足を止めてしまった。

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モトクロスを始めるまでは、「GWにロングツーリング」と決まっていた。春の名残を追いかけたいのか、東北や信州、北陸を目指すことが多かったように思う。“春の名残”なんてあいまいな話じゃないな、単純に「今が盛りの桜」を見たかっただけだ。どうにも花見の時期を逸してしまうのは、今も昔も変わらない。そんなとき、南北に細長い日本は立派な「タイムマシン」になってくれる。GWまでなら、にぎわう桜の木々を存分に楽しませてくれるのだから。

しかし、高遠城址公園の桜には、これまで逢ったことがない。見頃が4月下旬ということもあり、GWだと少し“遅い”のだ。何度かGWツーリングに組み込んだものの、いつも木々に残る桜花は少なく、ただ「桜まつり」と書かれたのぼりが、沿道に取り残され風にはためいているだけ。初めて高遠を訪れたときに「仁科五郎盛信」の生涯を訊かなければ、ここまで執着することはなかったとは思うが・・・駅に貼られたポスターで再会しては、気になってしまうのも仕方がない。

「高遠の桜は“赤”が強い」という。結婚したばかり、ちょうどNHK大河ドラマで、中井貴一主演の『武田信玄』が放送された年だ。すっかりドラマに魅せられたワタシは、keiと二人、GWに信玄ゆかりの地を見てまわることにしたのだ。そこで何気なく立ち寄ったのが高遠城址公園、桜の名所であることも武田最後の武勇伝も、この時初めて知ることとなった。桜が終わった公園は、太陽のある時間にもかかわらず、木々の枝葉が陽射しを遮り、うっそうとした暗がりを拡げていた。誰かに見られているような、ちょっと薄気味悪い雰囲気は、単に気のせいでは片づけられない、二人して今でもそう思っている・・・。

その1の今日は、ここまで。薄気味悪さの正体、高遠桜の“赤”の秘密、そして五郎盛信の生き様などなど・・・続きはその2、その3で。お楽しみに!