ビニール傘を忘れたら・・・どうする?

草木を潤す雨の一日。ジャケットを羽織ってちょうどいい感じの肌寒さの中、所用で東京駅までやってきた。14時30分を過ぎたばかりで、約束の時間にはまだ少しある。時間つぶしに八重洲の地下街“キラピカ通り”をそぞろ歩いてみることにした。

八重洲中央口から有楽町方面に向かう。途中“東京ラーメンストリート”なる角を通り過ぎる。昼時をとっくに過ぎているのに、まだ20人ほどの客が順番待ちをしている店もあったりして驚かされた。通りに流れ出す香ばしいスープの匂いが、直接“胃袋”を刺激してくる。後悔先に立たず・・・昼食をすませてきてしまったのが悔しくなるくらい、暖かくてこってりとした匂いだった。

有楽町に近づくにつれて、食事処が軒を連ねるようになる。和洋中、どこもしっかりとした旨いものを食べさせてくれそうだ。値段もそこそこ、お値打ち感があるし・・・賑わいの去った通りに出しっぱなしの“サンプル”を眺めながら“お味”を想像しつつ、気がつけば「今度来た時に試してみたい店」の物色を始めていた。

そんな妄想を楽しみながら歩いていると、中華店から若い店員が勢いよく飛び出してきた。客の忘れ物なのだろう、右手に透明のビニール傘を握り締めている。慌てた様子で通りを右左と見渡すが・・・気づくのが少し遅かったのか、客の姿は見えないようだ。しばらく探しても見つからないとみると、おもむろにゆっくりと、そして残念そうに店の中に戻っていった。

夜になっても雨は降り続いている。「あの傘、どうしているのかな?」。ふと、そんなことが気になった。ビニール傘を取りに戻る人は少ないと思うけど・・・もしかしたら後悔したかもしれないね、今日のお客さんは。