見舞いの褒美は思いがけない体験だった

思っていたよりも降り出しは遅かった。久しぶりの『ONE PIECE』をあきらめて、本降りになる前にKX&RMの洗車を始める。きれいにしてみると、RMには“初転倒”の傷跡があちこちに、そしてKXは・・・フォークスライダーガイドが割れ、チャンバースプリングがひとつ、なくなっていた。やはり洗車はメンテナンスの“基本”なのだと改めて気付かされる。強くなってきた雨足に残りのメンテナンスは“棚上げ”、弟の見舞いに行くことにした。

昼食をすませて、三郷までCARRYを走らせる。転院した病院へは初めてだ。武蔵野線三郷駅を越えて大場川沿いを南下、「そろそろかなー」と思っていると、隣のryoが案内板を見つけた。中途半端な位置に掲げられた看板に惑わされながらも、看板手前の路地を慌てて右に曲がる・・・と、すぐに建物が見えてきた。通りをはさんで反対側が駐車場だ。一番奥の並びにCARRYを収めてエンジンを切る。途端にフロントガラスが雨に滲んでしまった。

足早に入り口に向かう視線の先、玄関脇に七夕の飾り付けが見える。冷たく肌寒い雨の中、あまりにも季節を先取りした風物詩は、奇異な印象だ。玄関ホールに入ると、カメラを抱えた人が行ったり来たりしている。病院の紹介ビデオでも撮影しているのだろうか?受付をすませて面接バッチを受け取り、エレベーターで3階に昇っていく。開放的な空間に白と桜色の壁、通路や病室も広く取られていて、ここならいくぶん気分も晴れやかになっていることだろう。

案内された病室を覗いてみたら、ベッドはもぬけの殻。「どこだ?」と病室の外を探すと、オープンスペースのテーブルに雑誌を拡げたまま、うとうとと・・・昼寝をしている。肩を叩くワタシに驚いた様子の弟、一瞬良く分からなかったようだ。一月振りだからそれも仕方がないか。ただ、症状はだいぶ良くなっているみたい、おまけに毎日退屈しているのだろう、よくしゃべること。食事のこと、父と母のこと、ryoのこと、バイクのこと、早く家に帰りたいこと・・・そして、1階でのドラマ撮影のこと・・・。

弟によれば、玄関のカメラはドラマ撮影の機材らしい。「V6の井ノ原が来るかも?」と、病院中が色めきだっていたという。「せっかくだから」と三人揃って1階に降りていくと・・・「あっ、やってるやってる」。すぐ横で見物している人とスタッフの会話が聞こえてきた。今夏7月に放送するテレビ朝日系ドラマ『警視庁捜査一課9係』の撮影だという。羽田美智子津田寛治吹越満田口浩正・・・いずれも「あー、見たことあるー」の役者さんたちばかりだ。なかでも感動したのが・・・羽田さん。「顔、小さ!」さすが女優さんって感じで、とってもきれい。こんな近くで役者さんを見るのは初めての三人、しばし夢心地で撮影を眺め続けていた。

夕方からバイトのryoに合わせ、3時を回ったところで病院を出る。ドラマの撮影は、まだ続いていた。そして雨も。玄関脇にあった七夕飾りだけがなくなっていて・・・季節外れの七夕の意味が、今わかった。さて一体どんなシーンが映し出されるのか、7月の放送が今から楽しみだ。見逃さないようにしなくては!