kei, what can I do?

伸びやかに広がる雲に反射して、杏色の夕日が地表に降っている。辺りの景色が橙に浮かび上がり、まるでナトリウム灯が瞬くトンネルの中にいるみたい。夏至の夕暮れは、ゆっくりゆっくり色彩を落としていった。

Bongoの中、メルボルン・シンフォニック・オーケストラをバックにピーター・クリスが“Beth”を口ずさんでいる。お世辞にも“上質”とは言えないが、しゃがれ具合に味があって・・・クセになる声だ。『ALIVE Ⅳ』・・・ピーター最後のアルバムは、さすがに“KISS Symphony”と銘打つだけあって、ライヴ盤としては高密で多彩な音作りがされている。そこが気に入っている一枚だ。

ピーターは歌う、“You say you feel so empty. That our house just ain’t a home”と。これまでずいぶん好き勝手に遊んできたなー・・・路面を手繰り寄せながら走るBongoの運転席で、今日はピーターのメッセージが響いてくる。不思議なくらいに。

風のない短い夜が更けていく。一晩中プレイするわけじゃないけど・・・“But I can’t come home right now. Me and the boy’s are playing and we just can’t find the sound.”・・・今はもう少しこのまま、好きにさせてくれ。どうしても見つけられないんだよ、サウンドが。いい感じに“開け切った”2ストのサウンドが・・・。週末に向けて、まさかバラードナンバーの“Beth”に後押しされるとは、KISS Magicか、それとも夏至の魔力なのか・・・。