歩道“橋”ですれ違った女性はもしかして・・・

雨の朝。庭の玉砂利がしっとりと本来の色に光っている。強く降っては止んでみたりと、せわしない雨だ。

家を出ると母校の中学校が目の前。こっ恥ずかしい三年間が詰まったままの校舎の脇を通って、駅に続く道を歩いていく。静まり返ったその校舎に、昔と変わらないチャイムが鳴り響いていた。

雨の歩道ですれ違うことも、駅のベンチで隣り合わせることもなく・・・憧れの同窓生と“劇的”に出逢うことはなかった。なかなかドラマのようにはいかない。各駅停車に揺られて二駅、松戸で快速に乗り継いで上野へと急ぐ。松戸で電車待ちしている間に、すっかり雨は上がっていた。

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18の時に家を出てから、ほとんど寄りつかなかった“自分ん家”は、いつしか“他人ん家”になっていた。建て直したからでも調度品が変わったからでもない。生活の“波長”みたいなものが合わないのだ。すでに一緒に過ごした時間よりも離れて暮らしている時間の方が長くなっているし・・・波長がズレるのも当たり前か。

“Many mile have come between us. And the days, they come and go”・・・1978年にリリースされたKISSのソロアルバム『PAUL STANLEY』、そのB面の2曲目“Hold me, touch me”の一節だ。ストリングスのバラードナンバー、“Beth”よりも切ない旋律が、いかにもポールらしい仕上がりだ。時の作り上げる距離が、二人を微妙にズラしていく。そして、なかなか詰めるのが難しい・・・何となく実家での居心地に似ている気がした。中学生当時は意味も良く分からないまま、“愛しのあの娘”へラブレター代わりに聴かせたこともあったっけ・・・ああ、こっ恥ずかしい!できることなら“削除”したい記憶のひとつだ。