いつもの練習ともレースとも違う・・・充実の一日(続き3)

陽射しを遮るテントの下、扇風機の風を浴びながらエキスパートクラスの“妙技”を眺める。ブレーキング、バンク角そして立ち上がり・・・その勢いと速さは、まさに異次元、完全に一線を越えた走りだ。uchino車も2ストらしい突き抜けた高音を残して、森の中へと消えていく。ルーストを上げてコースを攻め立てるエキスパート諸氏、4ストマシン独特の“割れた”排気音にチェッカーフラッグが振られ、ようやくコースに静けさが戻ってきた。早速4連攻略の“早道”を聞きに、城北Rのテントへ足を運んでみる・・・uchinoさんのおかげで、ココもずいぶんと敷居が低くなった。

「奥の4連、どうもうまくいかないんだよねー」とuchinoさんに訊ねるワタシ。すると、いきなり「ショウジさんさぁ、4連がうまくいかないんだってさー」・・・って。「ええっー!?いやいや、あなたに聞いたんですけど」と、思わずたじろいでしまう。なんてたって“アイドル”、バカっ速の“アイドル”、MC-SEの頂点にいるshow-gじゃ話がかみ合わないって、絶対・・・。

極めた走りをする人は、やはりひと味違っていた。それは思っていたような“激しい”ものではなく、とても“緻密”なやり方だった。とりあえずシッティングで2コ跳び、2コ目の山にリヤが当たったら、スロットルを開けるとともに膝を入れて残りの2コを跳び越える・・・ここまでは理解できるもっともな話。最初の2コ跳びと中間でのジャンプが上手くできていないのだ。問題は、この後show-gが語ってくれたこと・・・。

「わざと失敗するんです、例えば1つ目のジャンプをショートさせてみるとか・・・」

「フロントが刺さって、“こんな感じだとこうなるんだ”ってなるでしょ、こういう“失敗”をいろいろとやっておくといい」

「前もって失敗した時の動き経験しておけば、本番で失敗しても気持ちに余裕が出て、身体が反応してくれるようになる」

「何がアブナイって・・・失敗して“ウッ”っと身体が固まるのが一番アブナイ」

いつもの姿からは想像すらできなかった、“完成された走り”への拘りを見たような気がする。豪快なコーナーリングにミニモトらしからぬ“ひねり”、そして、猛り狂ったような排気音で駆け抜けるshow-g・・・あの烈しい走りは、単純な“勢い”じゃなくて、無数の努力が演出していたんだ。派手さの裏に潜む“秘密”に・・・ますます好きになった!

「時に思いこみも大事、“絶対跳べる!”って跳ぶんですよ」・・・show-gの言葉に勇気をもらい、果敢に“4連”を攻めるものの・・・やっぱりちょっと足りない。ただ、最初の2コ跳びへの進入速度をいろいろと変えてみたり、中間でのスロットル操作と膝の入れ方に気をつけたりと、“がむしゃらに”ではなく、少しは考えて走れるようになった。途中で調子が崩れても、それほど怖いこともない。程良い満足感を胸に、午前の部も終わろうとしていた。

<次回、最終話に続く>