愛してくれて・・・・・・・・・ありがとう!!!

「折り畳み傘があると安心でしょう」。宇井ちゃんの言葉を“都合良く”解釈して、XR230を引っ張り出してくる。朝から降っているわけじゃないし、せっかく“バイクの日”なんだから、バイクに乗らないと。土砂降りにならなければ我慢もできるはず・・・見上げる鈍い色の空も、雨を落とすにはまだ明るい感じだ。雲が太陽を隠しているおかげで、XR230の上はTシャツ1枚だと涼しいくらい。ただ、珍しく鼻歌交じりで走るのは、快適な気温だけじゃなく、職場の机に“楽しみ”が置いてあるからだ。昨日、都内への道中で読めなかった『ONE PIECE』の巻五十九・・・エースのことが心配でならない。

SN3I0083.jpg

自分が“兄”だからってわけじゃないけど、ルフィーよりもエースの方が好きだった。そばかす顔に憎めない物腰、飄々としながらも、ひとたび立てば“火拳”を使って大暴れ、どこか“赤髪のシャンクス”を思わせるポートガス・D・エース。巻五十八の最後で、エースのビブルカードが小さく燃えていく。気になってしかたがなかった“その先”を、ようやく今日、手にしてみれば・・・「愛してくれて・・・・・・・・・ありがとう!!!」と涙を流しながら崩れていくエース。ビブルカードは燃え尽き、微笑むようにして瞳を閉じてしまった・・・。あまりの展開に巻五十九は24ページで止まったまま、しばらくしないと、その先を読めそうにない。気持ちも沈み、何か落ち込む午後。そんな“暗い”昼下がりを救ってくれたのは、青い空に満たされた眩しい陽射し・・・天気が良い方に転がり、空の明るさに気分もだんだんと晴れていく・・・。

昼と夜の狭間、杏色した真ん丸の夕陽が、西の空にぼうっと浮かんでいる。陽射しを失った太陽は、そのまま静かに雲間に溶けて消え、一気に訪れた夕暮れが、Tシャツで走る身体をひんやりと包んでいく。県道を離れ小学校の脇を過ぎたところでXR230を路肩に寄せてジャケットに袖を通す。目の前に続くゴルフ場、真夏の陽光を遮ってくれていた木立には、ヒグラシの声が響いていた。どうやら雨に当たらず帰れそうだよ、エース。ありがとう・・・ゴール・D・エース・・・。