短いけど・・・楽しい夏休み! in 鮫川~その5

※最終話には一歩届かず・・・

体内時計が“MX408仕様”になっているのか、20分ほどでタレる二人・・・スロットルを握り締めているおかげで、右腕がすぐに上がる。揃ってパドックに帰ってくると、傾きかけた太陽が、Bongoの車影を少しずつ左へと拡げていた。ジャージを脱ぎ、エルボーガードとウエストベルトも外して、その日陰に腰を下ろす。森から流れてきた風が素肌に触れ、すうっと汗が引いていく。その風に乗ってオニヤンマが一匹、羽音も立てず悠然と飛んでいった・・・掌を目一杯広げても足りないぐらいの大きさだ。

天空に膨らむ続ける入道雲。その反対側、薄灰色の雲間から、時折雷鳴が流れてくる。少し怪しい雲行きだ。このまま降られては、明日は期待できない・・・ならばとことん走り尽くすだけ。いつ降り出してもかまわないようにBongoの荷室に濡れると面倒なものをしまいこんで、KXとRMに火を入れる。そのままストレートを駆け上がる二台・・・もちろんスロットルは、のっけから全開だ!

いつにもまして“接近戦”を挑みあうKXとRM・・・抜けるような高音が共鳴しているだろうと思うと、走りながら身震いしてくる。決して耳にすることのない“斉奏”・・・一度でいい、できれば聴いてみたいものだ。このクールも先行するのはKX、上りの攻め方が半端じゃない。気を抜いた瞬間に、すっと離れていく。“直線番長”としては、パワーで劣るKXに、しかも上りで置いていかれるわけにはいかない。ryoに引っ張られるようにして、RMの全開時間もだんだんと長くなっていき、二台とも本日最高の走りを披露する。

5周ほどして、ryoが前を譲る・・・攻守交代だ。ホームストレートをRM、KXの順で駆けていく。得意の下りコーナーで一瞬車影が下がるものの、すぐに真後ろに迫るKX。2ストなのにはっきりと聞こえる排気音が、RMに肉薄していることを伝えてくれる。練習ではあまり見せない、レース本番のような突っ込み・・・視界の隅にフロントタイヤが大きく映るほど近づいてくる。「父だからぶつかってもいいか」・・・何とも物騒な話だ。もちろん、そう簡単に先行を許すつもりもなく、後ろを意識しながらの速度とライン取りで、KXをいなしていく。詰められた距離を下りのコーナーで引き離す・・・その繰り返しだ。

<次回はいよいよ最終話?!>