短いけど・・・楽しい夏休み! in 鮫川~最終話

<9/1の続き>

執拗にRMのインを突いてくるKX。テールスライドしようものなら、すぐにも刺されてしまいそうな距離感で、バトルが続いている。奥の森からの下り、ライン上のコブにマシンを合わせられずに、激しくリヤが振られる・・・右腕にもうまく力が入らない。吉友さんに教えてもらったステップワークを意識しながら、何とか車体を保って最終コーナー、左バンクの頂点を掠めていく。

“抑え”が利かなくなってきたものの、せっつかれたまま終わるのは、どうにも気分が良くない。水たまりの右端、コース幅ギリギリのところにできた轍を丁寧にたどって、テーブルトップからホームストレートへ。置いていかれそうな上半身を二―グリップでこらえながら、“頂上”に向かって全開だ。

「座るのはまだ先ぃ!」・・・遠くに聞こえるoki-sachi師匠の声に、コーナーの頂点まで頑張ってスタンディング、シートに腰を落として砂利混じりの路面と相談しながら早目にスロットルを充てる。グラスウールを換えたばかりで、いくぶん低くなったKXの排気音が、ほんの少し遠くなった気がする。「簡単にはまくれませんから・・・リヤフェンダーに乗っかるぐらい身体を引いて」の言葉を思い出し、さらに身体を引き気味にしつつ右手も絞り込んでフープスを通過、アウト側のラインから翳った森へと翔るRM。向きを変える瞬間にマシンの勢いを止めてしまう悪癖を“矯正”して、奥の森の頂に“開けっぱなし”で駆け上がる・・・今日、一番の出来だったかもしれない。

僅かばかりスロットルを開け気味にして、下りのコブをやり過ごす。最終バンクの立ち上がりで減速、テーブルトップをなめながら後ろを振り向くと・・・スロットルから手を離して、左右にぶらぶらと降っている。「もう上がろう」の合図だ。もちろん異論はない。気力すら失せるほど十分に走った。左手をあげて、ゆっくりとコースから離れていく。

マシンを降り、頭から井戸水を浴びると、少し生気が戻ってきた。練習でも余力を残さず、全力を出し切ってしまうのは・・・果たして良いのか悪いのか。今日は、そのワタシ以上にryoの方がはしゃぎ過ぎ。もはや明日走ることは考えられない状態だ。そんな二人の頭上に雷鳴が轟く。あとはBongoにすべてをしまい込めば、いつ降られても思い残すことはない。

雷に急き立てられるように帰り支度を終えて、FMXの時間になりつつあるモトパーク森を後にする。走り切った感覚と程好く癒された気分を抱えて、鮫川村の中心街へと下っていく。ryoの笑顔、その瞳に映るワタシの微笑み・・・楽しく“全開”で走れたのだから、満足できないわけがない。上手、下手では量れない、“思う存分”に楽しめるのが、ココのいいところ。いつまでもこのままで・・・そんな思いに、森を渡る風が応えてくれているようだった。