極上のトラクションは・・・めったに味わえないもの~最終話

午後になると、ブルで盛られた赤土が弾き飛ばされ、いつもの固い路面が顔を出してきた。所々に引かれたタイヤの軌跡は、少しだけ強くなった雨に濡れて、薄く光っている。徐々に滑り出しが早くなったコースを泳ぐようにして走るのは・・・ryo。乗れているのか、こうした路面が性に合うのか、吹け切った排気音でコーナーとコーナーをつないでいる・・・。

開けて走れる“路面”は相変わらず・・・ただ、大きな雨粒がゴーグルに張り付いて、視界がおぼつかない。コーナーの輪郭も滲んでぼやけてしまっているなか、右手を緩めることなく“勘”で走り続ける。慣れたMX408だから為せる業、他のコースじゃあ・・・こうはいかない。走っているマシンも少なくなっていたせいか、それほど怖い思いをすることなく・・・気がつけばチェッカーまで走り切ってしまっていた。

パドックに戻れば、テントの下でくつろぐkawaraの親分。いくら明日がレースと言っても10周ぐらいしか走っていないような・・・。“青切符”の分があるから、1周が約2000円の計算・・・すいぶんと豪気だ。贅沢な練習に感服しながらも、強くなってきた雨脚に、最後の1クール15分を残して切り上がることに・・・。ryoもワタシも、良い感触のままで練習を締めることができた!

オフヴィレから“大返し”してきたkyohei feat. KX250F。その走りと“大ジャンプ”を堪能して、ようやく撤収を開始だ。降る雨の中、汚れたままのRMとKXを順番に積み込む。軽トラからワンボックスに“格上げ”したありがたみを感じる一瞬だ。すべての荷物を積み込み、二日後にまた来ることを約束して・・・一路WESTWOODへ。無くなりかけている2ストオイルだけが目当てではなくて、紙切れの領収書を“魔法の券”に換えてもらうため、“悪魔の券”の使い道を探すため、そして・・・くだらない話をするために、ゆっくりとWESTWOODに向かう。

賑わう店内、買いもしないで物色しまくるワタシ。kubo-chanの鈍らな返事も、練習疲れの身体には心地良く響くから不思議。“ツッコミ”の大きい姉さんがいなくてチトつまらなかったけど、代わりに細いお姉さんがにこやかに相手をしてくれて・・・これはこれで正しいWESTWOODだ。SIDIの新作が入荷したら連絡をもらうことにして、いつもの「また来週!」と店を出る。薄暗い空、外はすっかり本降りになっていた。久々ホームでの練習に心満たされ、帰路に着く。これで“浮気者”も返上できたかな?