温泉好きにはいい季節が巡ってきた~後編

<昨日の続き>

夜半から強く降り始めた雨・・・5人も入れば窮屈になってしまう露天風呂に浸かりながら、黒い空から落ちてくる雨を目で追いかける。東屋風の屋根を叩いては砕ける雨、植え込みの緑色した葉っぱを揺らす雨、湯船の外に広がるコンクリートを打ち続ける雨。長湯にはもってこいの“ぬるめ”の湯で、ひとしきり湯浴みを楽しんで部屋に戻る。止まない雨音を聞きながら寝転がっていたら、いつしか寝入ってしまっていた・・・。

予報では、太陽が照るのは午後からと言っていたけど・・・カーテンの隙間から陽射しが覗く、ご機嫌な朝を迎えていた。週末は「コースに向かうクルマで“貧弱な”朝食」のワタシにとって、テーブルに隙間なく並んだ料理は、かなり“豪勢”だ。すっかり平らげ、重たくなった身体を抱えてチェックアウト。光を浴びた山々、そして四万川が、本来の色合いで煌めいている。明るい陽光の中、中之条まで降りて長野原経由、軽井沢を通って帰ることにした。

今ではニュースにもならなくなってしまった「八ッ場ダム」。その工事現場をくぐり川原湯温泉を過ぎると、草津温泉への玄関口、JR長野原草津口駅だ。ホームには冷凍ミカンが似合いそうな旧い車体の普通電車が停まっている。国鉄時代を思わせる、のっぺりとした橙色に濃い緑が引かれている様は、何となく安心できて微笑ましい。「羽根尾」の信号を左に曲がると、国道146号線だ。北軽井沢から浅間山を望みながら南に下がる。遥か太平洋沖にある台風のせいか、上空を足早に雲が流れていく。わずかに吹き上げていた水蒸気は、山頂に白い雲がかかり、見えなくなってしまった。

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旧軽の喧騒を嫌って、「白糸の滝」を見物していくことに・・・。記憶のかけらさえ思い出せないけれど、初めてのところではない。砂利の敷き詰められた路肩が延々と続き、クルマがびっしりと停められている。列から出ていくステップワゴンを目ざとく見つけると、その手前でハザードを点滅させて、空いた場所にバックで収める。秋の空気に覆われた隧道は、脇を流れる水の冷たさが伝わるぐらいに、ひんやりとしていた。5分ほど歩いて坂を上り切ると、糸を引くように細い水の流れが、屏風のように広がっている。滝とは言っても、こぢんまりとした、可愛らしい滝だ。

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女性の二人組に頼まれ、「白糸の滝」の碑と二人をフレームに収めて、デジカメのシャッターを押す。上手く撮れたかどうかはわからないけど・・・喜んでくれていたから、ボケていることはなかったのだろう。「旧三笠ホテル」の前を通り過ぎて、そのまま旧軽井沢まで降りていく。夏休みも終わった週末、人もまばらな淋しい“銀座通り”を思い描いていたら・・・とんだ思い違いだった。締めている店はひとつもなく、クルマの列とあふれる人混みが、旧軽らしい。その人いきれに圧倒されるように、賑わう交差点を後にして帰路を急ぐ。9月最後の週末、真っ青な空を背景に、太陽が夏の陽射しを振り撒いていた。